2016年01月01日

珍解説/後藤忠徳、海からの大量のCO2放出は無い

【珍解説者】 
 後藤忠徳/MANTA、@manta33blog
【記事】

(類似の珍解説)
 ○綾波シンジ/環境問題補完計画
(参考)
【ポイント】
タイトルからして「嘘・誤魔化し」の類となっている
 開いた口が塞がらないとでも言おうか、どんな思考をすればこうしたタイトルを付けられるのか不思議でならない。
 海には基本的に「水」という物質としてのCO2溶解・放出もあれば、言うまでもなく生物もいて光合成・呼吸・有機分解などもあり、もちろんそれぞれがそれぞれに変動してもいる。 しかも、人為排出量に比べて遥かに巨大な規模のCO2が常に、海から大気に放出されもするし大気から海に吸収されもしていることは紛れもない事実。
 海からの大量のCO2放出は「ある」のである。
carbon_cycle.png
(気象庁:各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 総合診断表 第2版 > 1.4 海洋の温室効果ガス、図1.4-3 炭素循環の模式図(1990年代)
flux_map.png

(気象庁:各種データ・資料 > 海洋の健康診断表 > 二酸化炭素と海洋酸性化に関する診断表、データ > 海洋による二酸化炭素吸収量の分布図
 後藤氏が資料として挙げた下記の説明でも、「行き来」「交換」「やり取り」「出入り」との表現が適宜使われており、海によるCO2の放出・吸収のいずれもが厳然と存在していることが明確に意識されている。
●海と大気による二酸化炭素の交換(ココが知りたい温暖化:国立環境研究所)
●海洋の炭素循環と炭素収支(気象庁)

○海・陸と大気とのCO2のやり取りが自然だけなら「平衡状態」というのは誤り
 図らずも後藤忠徳氏自身が下図を持ち出してきているが、こうした観測事実を眺めて「平衡状態にある」などと解釈する者はまずいまい。
 これらはどう見ても、大気とのCO2のやり取りが平衡状態になどなっておらず、「常に変動している」としか言いようがない。 
気温・CO2濃度の前後関係
graph0-cdce6.jpg
 さらに、下図は(そして冒頭の気象庁の図も)「「平衡状態」が描かれている」ものでは全くなく、あくまで1年分のCO2移動の量的な「収支」を示しているのであり、「完全に釣り合っているわけではない」どころか、そもそも完全に釣り合って(帳尻が合って)「いなければならない」前提で描かれる性格の図である(合っていなければ質量保存の法則に反する)。
fig1-d384f.JPGfig2-928c5.JPG

○海は正味で」CO2の吸収が放出より上回っているのであることを、相変わらずはっきりさせない
 後藤忠徳氏の上記2つの記事では、「正味」という言葉が一度も使われていないようだ。この点をこうまであやふやにするということは、単に理解不足というより、何か作為的にそうしているのではないかとさえ思われてくる。
 最後のところで「つまりは、海からのCO2大量放出などなく、むしろ海がCO2を大量に吸収しているらしい」などと書いてしまっているが、これもタイトル同様、全くの虚偽といってよいほどの粗雑な書き振りである。
 下記に、彼の拙い文章に補足を加えてみておく。
『ただし完全に釣り合っているわけではない。大気中のCO2も海洋中のCO2も刻々と変化する。なので海か大気のどちらかへ過剰にCO2が移動しているケースは無論ありうる。ではどちらに過剰に移動しているのか? 前回の温暖化連載(下記)でその計算例を紹介した。計算結果によれば、大気から海へ年間約21億トン(炭素重量に換算)の過剰なCO2移動が明らかとなった(なお、この例では「海からの正味の放出もありえる」として計算している)。』
↑ この文での移動量・放出量はいずれも正味の量。

『「そりゃおかしいぞ! 図2は古いし間違いじゃないか?図1の方が正しくて、CO2は海から大量に放出されている!」という人、図2がなければ図1もないことをお忘れなく。』 
↑ この文での放出量は、過剰・正味分を得る「前」の実際に放出された総量。つまり、違う意味の放出量が「混ざって」いる

『つまりは、海からの正味でのCO2大量放出などなく、むしろ海がCO2を正味で大量に吸収しているらしい。』
↑ この文では再び、「正味の量」の話に戻る。また、この「正味」の吸収量が「大量」なら、海によるCO2の実際の放出量と吸収量はどちらも「正味」の45倍ほど(「絶対」移動量で言えば合わせて90倍ほど)もあり、さらに遥かに大量。

(これはほぼ蛇足だが)実は気象庁のHPでは図1はもはや掲載されてはいない」も
 この炭素循環図は既に冒頭で示しているとおり、気象庁サイトの別のページにて引き続き掲載されている。


【追記】
後藤忠徳/MANTA氏による珍解説記事のコメント欄に下記の反論が掲載。適宜寸評しておく。

MANTA
本記事を批判するトラックバックをichijinさんから頂きました。/ichijin.seesaa.net/article/397791931.html
以下のようにお返事いたします(『』は上記ページより引用)。

・上記の図2は『「平衡状態」が描かれているものでは全くない』と指摘されていますが、間違っています。原資料を読むべきでしょう。
Figure 3.1のキャプションによれば、"これらの矢印はCO2の釣り合いを示している。海については物理的な大気-海洋間での交換(physical air-sea exchange)であり、毎年概ね釣り合っている”だそうです。さらに3.2.3の2段落目(p.197)では"大気と海面での交換は、そこを横切る分子拡散による"と明記されています。つまり図2は物理的な"交換"あるいは"平衡状態"を描いています。
←こちらの指摘を理解できていない様子。「毎年概ね釣り合っている」は、あくまで「海については」の話で、しかも「概ね」と断られている(つまり厳格には「釣り合っていない」ということ)。
 一方、こちらが言っているのは図「全体」の性格(「概ね」の釣り合いでは間違いとなる)のことであり、一部ではない。なお、ここでの「釣り合い」の意味合いを英語で見るなら、「Figure 3.1のキャプション」ではbalanceという表現が使われており、equilibriumは登場しない。
 「3.2.3の2段落目(p.197)」との箇所も、海−大気間のCO2交換過程そのものが主として何によってなされているかを説明しているだけであり、平衡に絡んでも反対に、CO2分圧の差によって正味のCO2移動が起こる(つまり平衡の「状態」にはなく、CO2濃度は変動する)ことを述べている。

・『海によるCO2の放出・吸収のいずれもが厳然と存在している』ことは当然です。人為的影響がない状態で釣り合っているかどうかです。
ところで先のFigure 3.1のキャプションでは「釣り合っていない部分」についても言及があり、"複数年〜複数世紀に渡るCO2濃度変化に影響を与えうる"そうです(与えるではなく、与えうる)。ではそれは具体的にどの程度の大きさかというと、Francey et al. (Nature, 1995)の式1がそうであるように、大気中のCO2濃度変化において"交換"の項は無視される(できる)のが通例です。
複数年〜複数世紀に渡るCO2濃度変化」と、「複数世紀」も含めて言うなら、大気CO2濃度を上げようとする要素であるCO2排出量の全量のうち、人為排出量が占める割合は最大の現在でも3%程度であり、100年前や200年前に遡ればさらに僅かとなっていく。一方、大気CO2濃度は既に数世紀前から、気温とともに上昇してきている。
 また、わざわざ「与えるではなく、与えうる」と念押しするのは、恣意的にそう曲解させたいのか、どこか胡散臭さを感じさせる。

・ご反論がお有りでしたら、上記の図2の両矢印が"交換"や"平衡状態"を示していないという文献をご紹介ください。ichijinさんのブログの文献はいずれも"交換"または"平衡"を示すものです。
・ちなみにFrancのey et al. (Nature, 1995)では、"交換"における「disequilibrium term(※)」についての記述があります。ただしこれは炭素同位体比についてであり(式2)、大気濃度そのものには影響を与えないと考えられています。
←この手の文献やら論文やらを示せとの要求は、もはや逃げ口上の類。しかもここでは、後藤忠徳氏による解釈や理解の仕方が主に批評されているのであり、そうした話に文献などあろうはずもなく、求めるだけ無駄。

※注:equilibrium=平衡なので、上の記事中では「平衡状態」と書いた。しかし厳密には、i) 物質の濃度変化も物質輸送もない状態を平衡状態といい、ii) 物質の生成過程と分解過程の速度が等しく物質の濃度変化がない状態を動的平衡状態という。よって上記は動的平衡状態と言い換えたほうが正確である。なお分野や視点によっては、定常状態と呼ばれる場合もある。 
←性質や意味合いの異なる平衡(equilibrium)・釣り合い(balance)・定常/安定(steady)といった話を相変わらず混ぜこぜ
 また、平衡「状態(にある)」とは、平衡に「達している」状態のこと。だから「物質の濃度変化がない」となる。一方、大気CO2濃度はどの期間をとっても常に「変化している」のだから、何ら平衡状態と呼べるものではない。
by MANTA (2014-06-27 19:17) 

MANTA
追記:上記の反論に対する反論がブログに追記されたようです。しかし、残念ながら、同氏は科学的な議論の仕方をご存じないようです。(以下はichijin.seesaa.net/article/397791931.html#commentより)

>「3.2.3の2段落目(p.197)」との箇所も、海−大気間のCO2交換過程そのものが主として何によってなされているかを説明しているだけであり
それを理解することが大事なのですが、分子拡散を理解できないようですね。
←何を議論しているのか分かっていないようだ。
 問題にしているのは「分子拡散」そのものではなく、それによってなされる海−大気間のCO2交換過程が「平衡状態にあるのかないのか」、ということ。

>この手の文献やら論文やらを示せとの要求は、もはや逃げ口上の類。
科学では「証拠」をベースに議論します。それを示さない議論はもはや疑似科学、あるいは妄想です。
←これも相変わらず頓珍漢。、「科学では「証拠」をベースに議論」するという中で、そうした証拠などに対する後藤忠徳氏の解釈・理解が珍妙であると指摘しているのである。

それでも同氏のブログを読んで、「科学的なブログだ」と思う輩が多いようです。科学技術教育の重要性をあらためて感じます。
by MANTA (2014-06-30 12:51)

MANTA ※一つ前の追記との重複部は除く。
>問題にしているのは「分子拡散」そのものではなく、それによってなされる海−大気間のCO2交換過程が「平衡状態にあるのかないのか」
この一文に、氏が分子拡散を全く理解できていないことが示されていますね。またFrancey et al. (Nature, 1995)などで、大気中のCO2濃度変化において"交換"の項が無視されている例を紹介しましたが、それに対する科学的な反論もありません。
←平衡状態か否かだけでなく、「交換」についても頭の整理がつかないらしい。
 後藤氏の言葉を使って言えば、「大気-海洋間での交換」は「分子拡散による」もので、「毎年概ね釣り合っている」となる。これは、そうした「交換」によってCO2濃度は常に変化する(つまり「物質の濃度変化がない状態」ではないのだから、平衡状態にない)が、一年分の大量の排出量と大量の吸収量の収支を取れば正味で概ね釣り合っている」という主旨。
 「大気中のCO2濃度変化において"交換"の項は無視される(できる)」も、あくまでこの「(正味で)概ね釣り合って」に類する話。

>そうした証拠などに対する解釈・理解が珍妙であると指摘しているのである。
ですので指摘に資する資料を持ってこられるとよいでしょう。ichijin氏の資料はいずれも"交換"または"平衡"を示すものです。
←引き続き頓珍漢。後藤氏が提示した同じ資料を見て、「いずれも"交換"または"平衡"を示すもの」といった彼の解釈・理解の珍妙さを指摘しているということ。
by MANTA (2014-07-01 19:06) 

−蛇足−
内容でもって反論できていないコメントが足された模様。
MANTA
どうも「平衡」や「正味」の意味が分かっていないのに、上記の記事を批判している人がいるらしい。上記のリンク先などを少しは読んだらどうだろうか? また、当ブログはCO2変化と気温変化の相互の因果関係を「無視している」とも批判されているようだ。実際にはもう何度も書いてる。
科学を理解したフリをして持論を振りまいたり、批判や質問に対して「既出だよ」と言われることは、普通は恥だから控えるのだが、そんなことには気が付かず「オレ、温暖化懐疑派の論客!」と思い込む人もいる。まさにこういう「論客」が科学をダメにしている。(背景には、こんな意見を本当と信じ込む「市民」の存在もある)。だからこんな余分な補足を書かねばならない。困ったもんだ。
※これは原発批判にもつながる傾向である。興味深いので別に記事を書こう。
Twitterでぶつぶつとつぶやく暇があるのなら、ここへコメントを寄せられたらどうであろうか? 貴殿が、いわゆる無知な「論客」でないのなら、
by MANTA (2014-05-25 10:44) 

加えて、要望を受けてトラックバックをしたにもかかわらず、下記のコメントが掲載。対応の仕方が頓珍漢な上、相変わらず内容ゼロ
MANTA
※トラックバックが多数届きました。内容を読んで承認しましたが、当記事を適正にご紹介頂いているようには到底思われません。特に反論に資する資料が皆無です。先方からのコメントを待ち、ご批判の意図を伺いたいと思いますが不適切な引用記事を紹介し続ける必要はありませんので、コメントが届かない場合は関連するトラックバックを全て削除します。ご了承下さい。(なお本コメントは管理用メモですので、後日削除します) 
by MANTA (2014-05-25 17:10) 

mushi
お疲れさまです、としか言い様がないですね・・・。平衡の意味を理解していない(あるいはわざと曲解している)のは、私のブログに対するコメントと同じです。 
by mushi (2014-05-26 00:12) 

MANTA
mushiさん、コメントありがとうございます。まずは同氏からのコメントを待ちたいと思います。彼のブログの解説では全く的を射ていませんので。どうぞよろしくお願いいたします。 
by MANTA (2014-05-26 07:43) 

posted by ichijin at 12:03| Comment(8) | TrackBack(0) | 懐疑批判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。
当ブログへのご批判・ご意見、ありがとうございます。
しかし「平衡」と「正味」の違いを理解できていないようです。
ぜひ下記記事や、記事内のリンク先などを熟読することをお勧めいたします。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24

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とはいえ以前、貴殿のコメントやTBを削除してしまったことには心を痛めておりました。改めまして、どうぞ当ブログをご自由にご批判下さい。
全てのコメント欄への書き込み・TBを貴殿に対して許可しています。
詳細は下記を御覧ください。
http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2014-05-24
Posted by manta at 2014年05月25日 11:01
こちらも「理解できていない」やら「熟読」せよやら、無内容コメントの繰り返し。
Posted by ichijin at 2014年05月25日 13:49
理解できないのなら仕方ありませんね。
ご反論がお有りでしたら、
このような不正確な引用サイトではなく、
どうぞ当ブログへお越しください。
Posted by manta at 2014年05月25日 14:30
こちらも先ずはトラックバックだけとしておく。
Posted by ichijin at 2014年05月25日 15:41
トラックバック、ありがとうございます。
ただトラックバックだけではご批判の意図は分かりかねます。
ぜひコメントをお寄せ下さい (^^)
議論はオープンです。
Posted by manta at 2014年05月25日 16:56
こちらも同じく、当記事で指摘したことのどの点がどう分からない?
>ただトラックバックだけではご批判の意図は分かりかねます。ぜひコメントをお寄せ下さい (^^)
Posted by ichijin at 2014年05月26日 00:05
 お久し振りです。
 僭越ながら、無益な論争は、消耗するのみです。 それに、今の日本では、地球温暖化二酸化炭素原因仮説は、年間で数千億円から一兆円規模の利権が渦巻く金融商品化していますので、論ずるだけ無駄です。 
 例えば、環境省関連ですが、省益化した温暖化利権は、極一部の批判者を除けば、傘下のNPO等や気象関連学者(?)にとっては、生活の糧ですので、真面に相手はして貰えません。
 此処は、論争が現在進行形で進んでいる海外の情報に親しんで、現実が阿保らしい仮説を論破していく様を観ているのが賢明です。
 例えば、米国では、米軍も参加した太陽観測で既に、寒冷化の予測がされていて、昨年の観測では、予測のとおりの観測事実が報じられています。 軍が参加しているだけに、全ての観測事実が公表されている、とは思いませんが、カナダの京都議定書離脱と併せて、何かを物語るものと思われます。 
 兎角、アングロ・サクソン系諸国では、実利的に考えますので、表と裏では相違することも多いので、温暖化を表の国際交渉事項にしながら、裏面では実際的な政策をとっている、と考えなければならない、と思います。 
 そう云えば、例のClimategate 事件も某国の諜報機関に依るもの、との観測もあります。
中國に依るネット・スパイ事件でも、犯人である中国軍人を特定まで出来るのですから、素人の科学者のメールを盗聴することぐらい簡単ですから。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110615001
太陽が極小期に突入する3つの証拠 Victoria Jaggard for National Geographic News June 15, 2011

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2013031504
穏やかな極大期、少ない太陽黒点 National Geographic News
March 16, 2013

http://sdo.gsfc.nasa.gov/
SDO | Solar Dynamics Observatory

Posted by とら猫イーチ at 2014年06月12日 16:36
卓見のコメント、有益情報紹介をいただき感謝。
>此処は、論争が現在進行形で進んでいる海外の情報に親しんで、現実が阿保らしい仮説を論破していく様を観ているのが賢明です。例えば、・・
Posted by ichijin at 2014年06月14日 15:47
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